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積層型ダイアライザー『H12ヘモダイアライザー』とは?特徴・効果

 
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どうもさぼ(@ce_sabo)です。

 

最近は末梢循環がトレンドのようです。

 

 

 

また「セプザイリス」という膜も流行っていて、今年のJSTB、日臨工でもいくつか発表がありました。

 

こちらも積層型と同じようなAN69ST(AN69にポリエチレンイミンを付加)のようです。

 

 

今回は主に維持透析で行う、AN69膜を使用した積層型ヘモダイアライザーを、復習を込めてまとめていきます。

 

 

積層型ダイアライザーとは?

 

 

 

現在はバクスター(旧ガンブロ)のみで発売しています。

 

 

ダイアライザーの機能分類2013ではどの分類にも属さない「特定積層型」となっています。

 

 

 

 

積層型ダイアライザーの構造

 

まずは積層型ってどんなやつ?だと思うので、イラストで見ていきましょう。

 

図1.積層型ダイアライザーのフロー図.ガンブロ株式会社からの資料

 

中空糸型が主流の中で、積層型は支持板と透析膜で血液側と透析液側を仕切っています。

それが何層にもなっていて、層が積む→積層と呼ばれているんだと思います。

外観は図のように四角い形をしているので、専用のホルダーが必要です。

 

 

では簡単に特徴をまとめていきましょう。

 

仕様(膜面積など)

 

バクスターのHPから一部改変しました。

 

 

現在3つのラインナップがあり、膜孔とかはない(?)ので、単に膜面積で考えればいいと思います。

 

膜面積にすると一番上のモデルでも1.5㎡程しかないのが特徴です。

 

あと、中空糸型と比べると、膜面積の割にPV(プライミングボリューム)が多いのも特徴です。

返血の量とかは調節するべきですね。

 

 

 

膜素材

 

膜素材は「AN69膜」です。

ハイドロゲルというゼリーのような形状をしています。

 

 

PVP・BPA

 

ハイドロゲルによって親水性となっているので、

PVPやBPA(ビスフェノールA)などが含有されていません。

 

PVPやBPAなどの物質は血液と接触するとなんらかの炎症反応を起こすとされているので、ないに越したことはないです。

 

 

膜荷電による吸着特性

 

積層型の一番の特徴となるのが、「強い陰性荷電」です。

 

これは後述する臨床効果で活躍します。

 

強い陰性荷電によって、炎症性サイトカインなどの炎症性物質を吸着除去、

更に補体活性が少ないという特徴があります。

 

しかし、良い点ばかりではなく、陰性荷電していると陽性荷電している物質と反応してしまうという欠点があります。

 

なので

陽性荷電している抗凝固剤のメシル酸ナファモスタット(NM)は吸着されてしまいます。

 

 

内部濾過がほとんど起こらない

 

これは良い点と取るのか悪い点ととるのかで特徴が変わってきます。

 

良い点で取るとすると、

内部濾過がほとんどないということはAlbなどの大分子物質が抜けづらい。

 

悪い点で取ると、

β2MGやα1MG以上の大分子物質が除去しづらい。

 

というようになります。

 

ダイアライザーの内部濾過ってなに?

と思った方はこちらの記事を参考にしてください。

内部濾過促進型ダイアライザーとは?原理を簡単に説明

 

 

臨床効果

 

注意
臨床効果は僕が調べた限りのもので、有意差あり・なし問わず、症例報告も含めます。

 

 

栄養状態の改善

 

これは色々な要因が考えられます。

1つは、積層型はAlbやアミノ酸などを除去しにくいという性質のためです。

2つめは、炎症性サイトカインなどを吸着除去することによる炎症を防ぐためです。

 

炎症と栄養は密接に関係していて、

“CRPの上昇”は、内臓蛋白である”アルブミンの合成は抑制”される

引用:参考文献1)より

というのも分かっています。

 

よって、炎症を抑えることは間接的に栄養状態の改善に繋がると考えることができます。

 

 

下肢などの末梢循環改善

 

積層型ダイアライザーを使うと、末梢循環がよくなり、下肢潰瘍などの改善効果があるという報告が多くあります。

 

これは強い陰性荷電膜であるAN69膜と血液が接触すると、血管拡張作用があるブラジキニン(BK)が産生し、血管が拡張し、下肢末梢の血流が改善されるためです。

 

積層型を使ってHDにSPPが上がるという報告や、

積層型を使ってサーモグラフィで下肢の血行状態が良くなるという報告がありました。

 

動脈硬化抑制効果

 

これはAN69膜の吸着特性によって、「小粒子LDL-chol(sd-LDL)」の吸着が起こるためとされています。

LDLコレステロールは動脈硬化の原因となるので悪玉コレステロールとも言われますよね。

 

LDLを吸着するという原理は似たようなものにLDL吸着器である「リポソーバー」などがあります。

 

原理はLDLを吸着するという点で同じですね。

 

 

 

貧血改善

 

AN69膜による抗酸化作用が関係しているという記述しか確認できておらず、

貧血についてはその作用機序が明らかにできませんでした。

 

ヘプシジン25という鉄代謝に関わっているホルモンに影響しているのでは?という報告もありましたが、詳しくはまだ解明されていないとのこと。文献7)より

 

知っている方は是非、お問い合わせかDMでお知らせください。

 

 

欠点

 

良いところだけではありません。

必ず欠点が存在します。

 

透析効率が低い

 

特徴の「内部濾過がほとんどない」の部分でも説明しましたが、

内部濾過がほとんどないことで、β2MG以上の大分子の除去効率ならびに小分子の効率も低いです。

膜面積(相当)が1.5㎡までしかないのも効率をなかなか上げれない要因にもなりますね。

 

CEの腕の見せ所としては、この欠点を利点として、不均衡症候群に予防で使ったり、栄養状態悪い患者さん、残腎機能が残っていてK値がもともと低い患者さんに使ったりもいいと思います。

 

プライミング・脱血の手技がやや煩雑 ※手動プラ・手動脱血の場合

 

これは手動プライミングや手動脱血のときです。

新卒の方などは全台オンライン自動プライミングで育っている(はず)と思いますが、手動の場合は少し、手技が煩雑でした。

 

・手動プライミングの時は透析液給液側(青側)のキャップを開ける

・手動脱血の際は「大気開放」または「ガスパージをかけながら」

などです。

 

積層型の構造上、血液側を流すときは「透析液側の圧を逃がす」必要があるわけです。

 

自動プラ・自動脱血が主流になってきたらそんなことはしなくていいので、予備知識としていれといてください。

災害時に手動でプライミングしなくちゃいけない時なんかに使えるはずです。

 

 

禁忌

 

以上のように積層型はかなり「使える」膜なのですが、注意点や禁忌もあります。

最後にこれだけは覚えていってほしいです。

 

・ACE阻害薬との併用

ブラジキニン産生が活性化され、血圧低下、ショックなどが起こりうる

 

・メシル酸ナファモスタット(NM)との併用(禁忌ではないが原則禁忌)

陰性荷電により陽性荷電のNMを吸着してしまう

 

 

以上です。

 

僕は個人的に積層型のように生体適合性が良いダイアライザーは好きなので、少し詳しく書きました。

 

過去に紹介したフィルターも是非ご覧ください。

痒みにオススメ「PMMA膜」

 

生体適合性を追求したヘモダイアフィルターNVFとは

 

 

 

[参考文献]

1)ガンブロ株式会社資料.積層型透析器H12ヘモダイアライザー MIA症候群の改善とバランス治療の最高について.2012

2)鈴木健也他.AN69膜の臨床効果の検討.日本透析医学会.2012

3)鶴田耕一郎他.AN69膜のさまざまな効能.院内資料

4)古屋良紀.AN69膜による下肢血流改善効果と脂質の関与.JSTBランチョンセミナー.2013

5)黒瀧理士他.AN69膜の下肢血流改善効果.日本透析医学会.2012

6)上野 裕司他.積層型ダイアライザーの抗酸化作用と貧血に与える影響.日本透析医学会.2015

7)阿部 直之他.積層型膜(AN69膜)における貧血改善効果の検証.日本透析医学会.2014

 

 

 

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